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脱皮の季節


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中学1年の国語の教科書に「風呂場の散髪(さんぱつ)」という、椎名誠さんの物語がのっています。この物語は「夏は少年にとって大きな脱皮の季節なのだろう。」という文ではじまりますが、皆さんはこの「脱皮」という言葉をご存知ですよね。普通の意味でいうと、私たちヒトではなく、エビやカニなどが脱皮をします。これらエビやカニは、外側に固い骨格を持ち、そうすることで外敵から身を守っている生き物です。これらは、ある程度時間がたつと、身体を大きくしていくために、外側の殻を脱いでいかないといけません。成長していくために、あらかじめプログラムされている脱皮ですが、実は、エビやカニにとってはたいへん危険なことがらなのです。例えば、エビは、身体の内側にやや薄い膜をはって、頭胸部と腹部の境目を開けて一瞬のタイミングで脱皮します。脱皮に失敗するとエビは普通死んでしまいます。また、脱皮直前は殻が薄くなっています。脱皮直後も殻は薄い状態です。そうした脱皮の前後に外敵に襲われたらひとたまりもありません。おいしいエサになってしまいます。そうした意味で、まさに脱皮は命がけなのです。

ところで、私たちヒトはどうでしょう。もちろん、ヒトは骨格が身体の内部にありますから、エビやカニのような脱皮はしません。しかし、だれもが「成長・変化」はします。ヒトにとって、この成長・変化が脱皮にあたると言えるでしょう。それは、身体の成長に関してはもちろんのこと、精神、こころの成長・変化にもあてはまります。そして、脱皮がエビやカニにとって命がけだったように、ヒトの成長・変化にも試練が伴います。もし、そのまま変化しないことを選ぶことができるなら、それが、おそらく楽でしょう。同じことをずっとやればいいわけですから。しかし、同じことのくり返しだけで、大人になることはできませんよね。昨日やったことと違うことを今日する、昨日できなかったことが今日できるようになる。ヒトにとっては、毎日が成長・変化の積み重ねです。できないことができるようになるには、試行しては修正し、また試してみるといった試行錯誤(しこうさくご)が必要です。できるようになれば喜びかもしれませんが、そこまではつらい苦労の連続でしょう。自転車に乗る練習や、鉄棒のさか上がりの練習を思い出して下さい。私たちヒトにとって試練の伴う脱皮は、成長していくために避けて通れません。今、苦しい思いをしてがんばっている皆さん、それはきっと大きな成長のための試練で必要なことなのです。夏は、日常から少し離れて、いろいろなことにチャレンジできます。夏は大きな脱皮の季節なのです。

御殿場校 澤味進